生物の生命活動の基盤をなす生体分子のなかで、生理活性ペプチドは最も重要な分子群の一つです。ペプチドの生理作用はきわめて多様であり、これは、情報発現のためにペプチド分子が相互作用する受容体分子の多様性、その受容体が存在する細胞・組織の多様性、さらには生物種の多様性に基因すると思われます。

近年、例えばショウジョウバエのペプチドやタンパク質を分子遺伝学的に解析するとホ乳類のペプチドやタンパク質に構造的に類似性が高いのみならず、それらが関与する種々の分子情報伝達機構にも類似性が高いことが明らかにされています。こうしたことからも、ショウジョウバエはきわめて有用なモデル系として注目されていますが、ショウジョウバエのような昆虫をはじめとする無脊椎動物の生理活性ペプチドやタンパク質についてペプチド科学者が専門的に研究している例は少ないのが現状です。一方、生物科学の分野では昆虫をはじめ無脊椎動物の生理活性ペプチドやタンパク質が盛んに研究されており、興味ある事象が非常に多くあります。

このフォーラムは、専門的にペプチドを研究している人と、生物科学分野で特に「無脊椎動物」のペプチド・タンパク質を研究している人との交流を通じて、これまで相互に意識してこなかった研究概念・視点、実験技術・手法をはじめ、さまざまな情報交換を行い、相互に勉強、協力し合うこと、さらには新しい先端領域への転進をめざそうとするものです。

日時
場所 福岡大学セミナーハウス 810-0044 福岡市中央区六本松3-4-20
世話人 下東 康幸(九州大)
主催
共催
参加費
内容
  • 開会のあいさつ
    下東 康幸(九大院理・化学)
  • イモ貝毒ペプチドのイオンチャネル阻害活性
    佐藤 一紀(福岡女子大・人間環境)
  • カブトガニのキチン結合性ペプチド群の多機能性
    川畑 俊一郎(九大院理・生物科学)
  • ヒドラのペプチド科学
    小泉 修(福岡女子大・人間環境)
  • 海産無脊椎動物グミの糖結合タンパク質及びその部分ペプチドの生理活性
    畠山 智充(長崎大工・応用化学)
  • ショウジョウバエFMRFアミド様ペプチドのハマグリ心筋収縮活性
    徳永 隆俊(九大院理・分子科学)
  • 時計タンパク質PERIOD・PASドメインの機能構造
    松島 綾美(九大院理・分子科学)
  • 昆虫の概日リズムペースメーカーホルモンペプチドPDF
    下東 美樹(福岡大理・生物)
  • チョウ目昆虫の季節型発現の光周内分泌調節機構
    遠藤 克彦(山口大・理)
  • カイコキモトリプシンインヒビターの生理機能
    藤井 博(九大院農・遺伝子資源)
  • カイコ前胸腺刺激ホルモンとその受容体
    片岡宏誌(東京大院・新領域・先端生命)
  • (特別講演)生理活性ペプチドの比較学的問題点 宗岡 洋二郎(広島大名誉教授)
  • 総合討論
  • 閉会のあいさつ
    脇 道典(九州院工・応用化学)